イリノイ大学留学記

イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の日本人留学生によるリレーブログ

日米の大学の違い

怒涛の中間試験ラッシュが終わりやっと時間ができたので、久しぶりにブログを更新したいと思います

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今回はイリノイ大学で2か月授業を受けた中で感じた日米の大学教育の違いについてまとめてみたいと思います。
2か月の短い期間で、両国のサンプル数も1ずつしかない状態で比較と呼べるのか怪しいと思いましたが、2か月が経過した時点での考察と、交換留学を終え他の大学に留学した友人と意見を交換した上で辿り着いた考察にどのような違いが生まれるのか比べてみるのも面白いと思い、とりあえず今回の記事を書いてみることに決めました。
なお以下の内容はあくまでも日米の大学の比較であり、優劣を語るためのもではないということを予めご了承ください。

まず両者の大きな違いとして挙げられるのが、1週間のコマ割りです。
イリノイ大学の場合、1週間で履修できる単位数が最低で12、最高で20となっています。
1つの授業の単位数が一般的に3、まれに4なのでほとんどの学生は4-6科目を履修しています。また1つの授業が週に2・3時間あるので、1日のコマ数は2・3個になるのが普通です。
聞いたところによると、こちらの大学では1年目から4年目まで同じようなコマ数で、単位を取り終わって遊び放題ということは基本的にないそうです。
一方、日本の大学は学年や学部によって異なりますが、コマ数は1学期あたり多くても15程度、1週間に同じ授業が開講されるとしても2回までであり、1日のコマ数を増やすなど履修の組み方によっては全休の日ができることも珍しくありません。
また卒業のための単位が4年生の前期・早ければ3年生のうちに揃い、残りの大学生活は自由に過ごせるということも起こります。(例外は少なくないですが)

せっかくなのでイリノイ大学での私の1週間の授業スケジュールを紹介したいと思います
月曜日・水曜日
11:00-12:20 Digital Advertisement
13:00-13:50 Popular Culture
火曜日・木曜日
11:00-12:20 Micro Economics
12:30-13:50 Macro Economics
金曜日
10:00-10:50 Micro Economics TA session
13:00-13:50 Popular Culture
15:00-15:50 Macro Economics TA session
朝の開始時間が11時と遅く、月~木曜日は授業間の時間が少なめになっています
授業外の時間が多いですが、授業内で課されるReadingや宿題の量が多いので自由に使える時間はあまり多くありません。

また成績評価の方法にも、日米の大学の違いが顕著に表れます
まず日本の大学の一般的な授業ですが、
・出席は評価に含まれることもあるが、比重はあまり大きくない。
・課題提出が評価に含まれることがあるが、大きなウェイトを占める例は多くはない。
・中間・期末試験の出来が成績を大きく左右する。期末100%の場合が少なくない。
・過去問対策が有効で、過去問やサンプル問題が学生間で出回っていたり購買部で買えたりする
これに対しイリノイ大学は、
・出席は結構重視され、授業に講義内容に基づいた提出物が課されることもある
・授業外課題は試験と同じくらいのウェイトを占める。(先述のPopular Cultureの場合Final Paperが期末試験よりも重視される)
・中間試験が何回もある。(先ほどのMacro/Micro economics は3回ずつもある)
・過去問対策がとても有効で、ほとんど同じ問題が出たりする。問題集に掲載されていることもあり、また試験前に教授が授業内容のおさらいをしてくれることもある。試験前にはOffice hoursに学生が押し寄せて教授やTAに大量の質問を浴びせる。

まとめると、日本よりもアメリカの大学の方が授業参加を重視し、アメリカの大学の方がサポートが厚いです。
2度の中間試験を経て気づいたのは、アメリカの大学の試験では重箱の隅をつつくような細かい知識を問うような問題は出題されず、授業内容の本質を問うような問題が多く出されるということです。授業をしっかり聞いていれば解ける問題ばかりでした。

試験に限って言えば、一番驚いたのがExtra Creditというセクションがあり、これに正解すると合計点数に加算されるというシステムです。これによりテストの満点が100点を超えるという事態が起こり得るのですが、これは何かアメリカの根本をなすある文化から生じている気がしてならないのです。

それがアメリカの“自主性を重んじる”という社会的雰囲気です。
様々なところで「日本では目立つのを避けるのが美徳とされるのに対し、アメリカでは自らをアピールすることが賞賛される」という文言を散々繰り返し聞いてきましたが、両方を生で感じた身としてこれは間違いではないように思われます。
確かに先ほどのExtra Creditは授業内容を越え自ら積極的に学習していないと解けない問題ですし、その他にも例えば授業中に教授が“I need volunteers”というとあっという間に人が揃います。
出席だけでなく、積極的に授業に参加することも成績評価の一部になっていることも大きな要因の一つでしょう。
しかし日本で生活していると嫌ほど感じる「同調圧力」は個人主義とされるアメリカでも無いわけではないことは日々の生活で感じています。「空気を読む」ことが求められる場面はアメリカでも当然存在します。
ただ小学生のころから自主性を重んじる教育をされているだけあって、日本に比べればアメリカでは生徒の自主性は圧倒的に尊重されているように感じます。
日本の教育では評価が減点式であるのに対し、アメリカでは加点式である、ということが言えるかもしれません。
そのような風土は大学になっても色濃く残り、ひいては社会全体の文化・雰囲気となっていると考えられます。

たかが成績評価の方法から1国の文化の根源的性質に結びつけてしまうのは暴論のようにも感じますが、日本だけでなく韓国や中国などの東アジアの国々の生徒と話しているうちにこのような結論に達しました。お互いの国の文化を比較し、意見を自由に交換できる時間が最近何よりも楽しく感じられます。

またもや前回のように長々と書いてしまいましたが、最近実はこのブログの記事を最後まで読んでくれている人が何人もいることがわかりとても感動しています。
特に前回の文化的適応の記事は反響があり、留学中の友人たちから賛同のメッセージが送られてきました。
またイリノイ大学に興味を持ってくれた人も増えたようで、留学についての相談もちょくちょく受けるようになりました。
ご意見や感想、質問がありましたらこのブログや私個人あてに連絡をいただけると幸いです。