イリノイ大学留学記

イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の日本人留学生によるリレーブログ

授業紹介 Part.2 -福田-

はじめまして、東京大学4年の福田です。
専攻は政治学で、大学の交換留学プログラムを利用して1年間イリノイ大学で学んでいます。
この文章では、自分の経験から「自分の関心に素直に履修すると留学生活楽しいよ!」ということをお伝えできたらと思います。ということで、まずは自分の関心と問題意識について簡潔に。

僕は、政治学の中でもマイノリティが抱える問題に関心をもって学んでいます。人種、民族、ジェンダーセクシュアリティ、社会階層、障害、中央-地方…。個人は様々なアイデンティティを持っており、これを社会のレベルで見ると、そこには多数派=支配的なアイデンティティと少数派=従属的なアイデンティティがあります。さて、我々が用いている政治システムの特徴の一つは多数決で議員を決める選挙制度ですが、これは少数派のアイデンティティの声をどの程度拾えているのでしょうか?日本で言えば、在日外国人の権利を求める声、性的少数者の権利を求める声や、沖縄の米軍基地に反対する運動は、どのようにして政治に取り入れられているのでしょうか?歴史上常に少数派であり続け、したがって選挙で常に声が届かなかった人たちは、同じ日本に住む個人として、多数派の人々と同じ権利を享受してきたと言えるのでしょうか?

短い文章なので最後はざっくりとした問いかけになってしまいましたが、僕はこんなことに関心と問題意識を持って学んでいます。今学期は5つのコースを取っているのですが、中でも3つのコースが特にこの関心に沿っていてとても楽しいので、以下でそれらを紹介していきます。
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【SOC 396: Sexuality & Society】
上記したアイデンティティの1つである、セクシュアリティ社会学的に理解していくコースです。性的指向は生物学的なものと捉えられがちですが、この授業では、各性的指向の意味付けは文化や時代によって大きく異なるのだという前提のもと、性に関する「常識」を徹底的に疑っていきます。(Queer theoryという理論を中心にコースが構成されています。)セクシュアリティというと性的少数者に目を向けがちですが、それ以上に、「普通」だと思われている異性愛者の性的指向も文化や制度によって構成されているのだというのが分かって面白いです。先日の授業では、バイアグラのCMを見てその珍妙さに皆で爆笑していました。
また、教授が先学期に履修したコースの1つ(Race & Ethnicity)と同じなので、彼に自分のことを良く知ってもらえて個人的な相談もしやすい関係になれたのも、このコースを取って良かったことの1つです。1年間以上在籍する方は、そういう履修の仕方をしても良いかもしれません。オフィスアワーに行って教授と仲良くなるのは、どの授業でも挑戦してみると良いと思います。

 

【SOC 471: Collective Action & Revolution】
タイトルの通り社会運動と革命に関するコースです。先述したように選挙での勝利が難しい少数派のアイデンティティにとっても、その外の政治システムである社会運動は非常に重要な舞台です。このコースでは、社会運動の参加者はどんな目的を持っているのか、社会運動には本当に効果があるのか、そもそもその効果とは何なのか、等様々な視点から考えていきます。社会運動は地域によっても大きく性質が異なるので、アメリカとも、教授の出身地域である中東とも違う日本の文脈ではどうなるのか…と授業の内外で考えるのがとても楽しいです。
このコースはゼミ形式なのですが、院生が多くて学生のレベルが高く、議論が活発で刺激的です。授業中に必ず一回は先生の意表をつく発言をしようという目標を立てて臨んでいます笑

 

【PS 456: Democracy & Identity】
「国民」「市民」「愛国者」といった概念がどのように形成されるのか、それが人々にどう影響するのかを考えるコースです。こうした概念は基本的に多数派に有利な形で形成され、しばしば少数派によって争われる(例:公民権運動)ものであるため、関心を持ちました。授業では、日本との考え方の違いを感じることが多いです。例えば、市民権は日本では固定的な概念だと思われておりこれに関する議論に触れる機会が少ない(≠無い)ですが、アメリカではより流動的な概念で、これが政治の主要なトピックになっています。この違いは、自分が日本の市民権について考え直すきっかけになりました。
SOC 471についても書きましたが、特に社会科学を学ぶ人は、このように日本の文脈に引き付けながら考えるとより多くのことが学べると思います。また、そういった視点から授業に参加すれば、他の人とは違う価値を発揮できて議論に貢献できることもあります。
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上記の全てのコースに言えますが、自分が関心分野について持っている問いが日々進化していく感覚はとても刺激的で楽しいです。抽象的な助言よりも自分の経験を…と思い感じることを色々書いてみましたが、楽しさが伝わっているでしょうか…?
とにかく、お伝えしたいのは「自分の関心に素直に履修すると留学生活楽しいよ!」ということでした。

ちなみに、僕はBlack Chorusというコーラスにも所属しているのですが、歌うのが好きな人には強くお勧めします。これはAfrican American系の曲を歌う大学公式のコーラスで、この大学でしかできない体験ができると思います。一応、MUS 261というコースで1単位だけもらえます笑 興味がある方は是非一曲聴いてみてください。→ ‭https://youtu.be/PyoNoM3ohaU

以上